Yoshiko's View 04/03/28

103才の父が描き続けた朝日

 2004年元旦のおせち料理を食べ2日の朝に人間の尊厳を誇り高く保ち、ボケず、病気せず、最後のトイレに一人で行きベットの上でまるで花火がパッと散る様に103才の父は人生の幕を閉じた。百万人に一人と回りの人々に羨ましがられ、正に古今東西、人間が求めて止まない最後を遂げたのである。これこそ神から与えられた最後のプレゼントと思う。
 その父が毎年富士山のカレンダーを買い求めて必ず自分で富士山の横から輝いている(?)朝日を赤く描き入れてそれを毎朝拝むと言う。良く見るとニッコリ笑っている顔が描いているではないか。実にユーモアがある。しかしあまりにも小学生の絵の如く下手くそなので、如何に喜んでくれるであろうかと、富士山を描くのに抵抗を感じながらも、金箔で光り輝く朝日の絵をプレゼントしたのである‥‥が。ところがです、これは朝日ではないと気に入らず自分の朝日のカレンダーを誇らしげに飾るのだ。そのガンコな自信さに全くプロたる画家のメンツがつぶれたが、納得出来た。
 かって私の女子美進学を「女の絵描きなぞ不良だ!」と猛反対して美術の先生が説得したことがあった。故に子供の描いた絵なぞ認めたくないわけ。自分の描く朝日こそ威光を放つありがたい朝日だったのだ。
 世に大家と言われている先生方がもっともらしい顔して「まだまだ自分の納得する絵は描けません」とうそぶき、高い価格で売っている。ならば、自信のない作品を売るなよと私は思うのだが。それに比べ自分の朝日を名作と信じて誇らしげな父こそ本物のプライド高きアーティストではないかと、父を私は尊敬するのであった。
103才の父の朝日、ブラボー!

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